この記事は、前半の続きです。まだ前半を読んでない方は最初にこちらをお読みください。
この記事はYouTubeにて動画と連動しております。
さて、後半戦です。
この後半では、実際の演奏ではコードをどう弾いているのか、その考え方やルールを解説していきます。主に「ヴォイシング」の話です。
お話する項目は、
- 順番は入れ替えてもいい
- 同じ音名がかぶっても、カウントは1個
- 低音はルートを決定する
- かぶっている音は、省いてもいい
- かぶっている音を省かないときは、どんなとき?
- そのとき鳴っている全部の音で考える
- ミンミン一本指奏法は、何であれで成立しているの?
初見では何のことやらという感じでしょうか、でもわかってしまえば何でもないことばかりです。
では、始めましょう。
順番は入れ替えてもいい
Cのメジャーコードは、ルートのC、長3度のE、完全5度のGで構成されていました。一番下がCの音で、その上にEとGの音が乗っかってます。このルートのCをオクターブ上に持ってきて、E、G、Cという順番に変えてもOKです。
順番が変わっても、音名の組み合わせがC、E、Gであれば、それはCメジャーコードになります。
Cの音を上げるだけではなく、他のE音やG音を上げたり下げたりしても、組み合わせがC、E、Gであれば、それはCメジャーコードになっています。
Fmコードの場合は、構成する音が F、A♭、Cであれば、順番がかわってもコードネームは変わらずFmです
つまりコードは、そのコードを構成する要素(音名)の順番を入れ替えても別のコードにはならないのです。弾きやすくしたり響きが良くなるように音の順番を入れ替えてもOKです。
ただし、これには「例外」があり、2つ後の章で解説します。
同じ音名がかぶっても、カウントは1個
例えばCのコードの基本形はC、E、Gで、ルートCを上に持ってきてE、G、CにしてもOKですが、下のCを残したままC、E、G、Cという4つの音にしてもかまいません。これでもコードネームはCのままです。
Cの音が2個出てきてかぶってますが、音名の種類としてはC、E、Gの三種類しか出てきませんので、コードネームはCのままです。別のコードネームにはなりません。
低音はルートを決定する
Am7を構成する音は、A、C、E、Gの4種類です。このコードはA、C、Eのマイナーコードにセブンスの音が乗っかった暗い響きがします。音の順番を入れ替えて、C、E、G、Aにしても、E、G、A、Cにしても、Am7であることは変わりません。
ここで、いままで出てきませんでしたが、C6というコードを考えます。C6はCメジャーコードのC、E、Gに、長6度のAの音が追加された音です。Cメジャーが基本になっているので明るい響きがします。音の順番を入れ替えてA、C、E、G にしてもE、G、A、Cにしても、C6であることは変わりません。
Am7の構成音はA、C、E、Gで、C6の構成音はC、E、G、Aです。C6のAの音を下にもってきてAから始めるとA、C、E、Gとなり、Am7の基本形と同じになります。別のコードのはずですが、同じ音で構成されています。
一方はマイナーの暗い響きのコード、もう一方はメジャーの明るい響きのコードのはずですが、区別がつきません。
さて、どうしたものでしょうか?
これを明確に弾き分ける方法があります。
コードを押さえているところより低い音域で、ルートの音をひとつ加えてみてください。
ポイントは、他の構成音より少し離れたところで、1音だけ加えることです。
まず、C6の基本形のC、E、G、A の音を鳴らして、最初のCの音よりオクターブ下のCの音も一緒に鳴らしてみましょう。明るい響きがしますね、これはC6の響きです。
では、上のC、E、G、A はそのままで、下のCの音をCからもっと下のAの音にしてみましょう。暗い響きになりましたね。これはAm7の響きです。
同様に、上のコードをAm7にして、低音をCの音にするとC6の明るい響きになり、Aの音にすると暗いAm7の響きになります。
これは何が起こっているかというと、「低音でルートの音を鳴らすことにより、そのコードのルートの音が何なのかを決定している」のです。構成する音はAm7もC6もA、C、E、Gの4音で同じですが、低音でAの音が鳴っているとルートはA音でそのコードはAm7、低音がC音ならルートはC音でそのコードはC6になる、ということです。
まとめると、「低音はルートを決定し、コードを決定する。」と、いうことです。
かぶってる音は、省いてもいい
上でAm7を作って、低音でA音を鳴らしてAm7の響きを作ったとき、A音は上と低音で2個出てきます。こうゆう場合、上のA音は無くなっても、コードを構成する音はC、E、G、Aの4種類、ルートは低音のA音なので、コードはAm7になります。つまり上はC、E、GのCメジャーコードでも、低音でA音が鳴っていたら、それはCメジャーではなくAm7なのです。
Cメジャーコードだと低音ルートはC音です。そのとき上のC,E,GのC音は省いてE,Gだけにしても、低音Cがあって構成音はC,E,G、ルートが低音のCなので、全体で見たらCメジャーコードです。E音をEフラットに変えて、上はE♭、G、低音はCなら、このコードはCmになっています。
かぶってる音を省かないときは、どんなとき?
上記で、音名がかぶってる場合は、かぶってる音を省いてもコードは変わらないというお話しをしました。では逆に省かないほうがいい場合とは、どんなときでしょうか。
ギターのコードを見ていきましょう。
ギターのローポジションでのCコードの押さえ方です。
下から、C、E、G、C、Eと5音鳴ってますが音名の種類はC、E、Gの3種類です。
C、E、Gの3種類の音が1個ずつ入っていればコードは成立します。なので、高いほうのC、Eは省いて低いほうのC、E、Gでコードを鳴らします。Cメジャーの響きは変わりませんが、高い音がなくなったのでギターのコード特有のキラキラした広がりのあるジャラーンという感じではなくなってしまいます。
では、真ん中のGから高い方のCとEの3音でCメジャーコードを作ります。たしかにCメジャーの響きで音は軽くキレはありますが、低いほうがなくなったので迫力がありません。
ギターでジャラーンと弾きたい場合は、音を省かずに全部鳴らしたほうがそれっぽくなります。
ギターに限らず、省くと音の迫力や厚み、広がりがなくなる場合は、その音は残しておいたほうがいいです。これはコード理論の話ではなく、演奏やアレンジ、最終的にどういう音を出したいのかという観点からです。
「必ず省いた方がいい」でも「必ず残したほうがいい」でもなく、「状況で変わる」のです。すっきりさせたい場合は省いても良し、厚みや広がりが欲しいのなら残しても良し。演奏する楽器の音色にもよるし、誰かと一緒に演奏するなら自分以外の楽器との兼ね合いにもよります。音を省くのも残すのも順番を入れ替えるのも、最終的にどうするのかは自分の耳(センス)で決めてください。
コードは、そのとき鳴ってる全部の音で考える
演奏は、一人だけでするものとは限りません。バンド等何人かで演奏する場合は、他のメンバーの出す音と合わせてコードを考えます。
具体的に見ていきましょう。
あなたは、キーボード、ベース、サックスの3人のバンドのキーボーディストだと仮定しましょう。
曲の出だしのコードはC,あなたはCメジャーコードのC、E、Gの3音を弾きます。ルートを決定する低音のC音はベースが弾いています。
次のコードはAm7です。あなたはCメジャーコードのときと同じC、E、Gの3音を弾いたままですが、ベースが低音でA音を出せば、ルートはAになりベースとキーボードを合わせるとAm7になっています。
次のコードでベースがC音に戻りキーボードと合わせてCメジャーになっているところに、サックスが入ってきてB♭の音を吹いています。C,E,GにB♭が加わり、全体でみるとC7です。
次はベースもサックスもそのままで、キーボードのE音をE♭音に変えます。そうするとバンド全体でCm7が鳴っています。
全員でコードを構成している感じ、わかっていただけますでしょうか?
「そのとき鳴ってる全部の音」というのは、ギターやピアノの楽器1台だけで行うソロ演奏なら一人で出しているその楽器の音が全部、弾き語りで楽器にボーカルが乗っかったら楽器と歌メロの音で全部、バンドだったら参加している歌や楽器の音全部、ということです。
(ちなみに、同時に複数の音が出せない単音楽器(サックスやトランペットなど)でも、一人だけでコードを弾き分ける演奏もできます。分散和音という考え方を使いますが、これはまた別の機会に、)
つまりこの章の結論は、
「参加している全員の音でコードは作られている」ということでした。
ミンミン一本指奏法は、何であれで成立しているのか?
この章はミンミン一本指奏法の「仕組み」のお話です。(一本指奏法って何?という方は、こちらの動画シリーズを参照ください。)
ミンミン特有のお話になるので、ミンミンに興味のない方は読まずに次の「まとめ」に進んでいただいてかまいません。一番読んでほしい対象は「ミンミン一本指奏法ができて、さらにレベルアップをして一本指奏法オンリーから卒業したいと思っている人」です。
では、始めます。
コードの基本的な考え方は、「ルートの上に決まった関係性の音を足していく」でした。
一本指奏法で、押さえる場所を決める「前ブロック」は、ずばりルートのことです。
ルートがCのコードで考えていきます。
一本指奏法ではコードネームの前ブロックがCであれば、C△7でもCm7でも、3本の弦を全部開放弦で鳴らします。この時鳴っている音は、C、G、Cです。音名の種類だとCとGの2種類しか鳴っていません。
C△7を構成する音は、C、E、G、Bの4種の音です。
Cm7を構成する音は、C、E♭、G、B♭の4種の音です。
しかし、一本指奏法で鳴っているのはCとGの2種だけです。
見比べて、気が付きましたでしょうか?
一本指奏法では、C△7とCm7に共通する音のCとGが鳴っています。
本当は4つの音名が入って初めてC△7だったりCm7になったりするのですが、一本指奏法はルートと完全5度の2音だけです。つまり、指定されたコードを音数が足りない不完全な形で弾いているのです。
省略された3度と7度の音は、そのコードのキャラクターを表現するのに重要な音です。長3度か短3度かで明るいメジャーか暗いマイナーかに分かれ、7度が短7度ならブルージーな感じで長7度なら透明な広がりのある音になります。一本指奏法は、その重要な音を省いています。なぜなら、コード演奏ぽいことが「指一本で簡単にできる」ことを最優先しているからです。
ではここで一本指奏法を離れ、ルートがCのコード、C、Cm、C△7、C7、Cm7の5つをミンミンで弾き分けてみましょう。
Cメジャーは1弦4フレットのE音を鳴らしてC、G、Eにします。
Cmは、1弦3フレットのE♭音を鳴らしC、G、E♭にします。
7度が付くコードは正式には4音ですが、ミンミンは弦が3本しかないので4つの音全部は鳴らせません。なので3音で弾くために今回はキャラが薄い完全5度を省きます。
C△7は、3弦開放のC音に、1弦4フレットのE音、2弦4フレットのB音を加えてC、B、Eで作ります。澄んだ広がりのある感じの音になると思います。
C7は上記C△7の2弦を半音下げて3フレットB♭音にし、C、B♭、Eにします。ブルージーな感じが出ていますでしょうか
Cm7は、上記C7の1弦を半音下げE♭音にし、C、B♭、E♭にします。
3度と7度の音を入れることによって、一本指奏法のときよりもコードのキャラクターがはっきりしているのがわかりますでしょうか。
さて、この章の結論は、
ミンミン一本指奏法とは、指一本で簡単にコード伴奏ぽいことをするために、本来3音以上で構成されるコードを「ルート」と「完全5度」だけの2音のみの不完全な形で弾くこと。
ということでした。
まとめ
この「コードの基本的な考え方(前半)(後半)」をまとめると、
・コードには基準となる音「ルート」がある
・コードは、ルートの音と他の音との半音単位での関係性で成り立つ
・コードを構成する音の並びの順番は変えてもいい
・音名がかぶっても、コードネーム的にはカウントは1個
・低音はルートを決定し、コードを決定する
・コードを構成する音がかぶったら省いてもいいし重ねたままでもいい
・コードは参加者全員の音が関係して構築される
と、いうことでした。
楽器をコードネームが書いてある楽譜で練習している人は、前半の最後のほうにあった「コード構成音チェック表」をプリントアウトして手元に置いて参考にしてもらうと、演奏の理解が早く深くなると思います。
クラシックピアノの楽譜なんかはコードが書いてないものがありますが、ルートが何で他の音は何度かというのをがわかれば逆にコードネームを導きだせます。
今回ここに記したことは「ミンミン一本指奏法ができる人にコードの話の続きをするには、何から伝えればいいか」というところから来ており、一般的の初心者向けコード講座よりハードルの低いところから書き始めたつもりです。私が見た限りでは「コードは半音階での音の関係」と始めているのはこのブログのみで、他の人のものは必ずと言っていいほど「メジャースケール」「ダイアトニック」の説明から入っていました。なので、この記事を読んでから他の一般的な説明を読めば、より理解しやすくなるのではないかと思います。
「ハードルを下げて書いた」とは言うものの、全くわからない人が一回だけ読んでマスターできるようなボリュームではありません。まず「基準の音はルート」だけ覚えたら、あとは何となくで、つまづいたら読み返し時間をかけて理解していってください。
※この記事の内容を動画にしました。
ミンミン一本指奏法以外の内容が含まれています。動画は音でも確認できます。
おわりに
執筆にあたって当初は「今回は初心者向けだから、あまり重くならないようにしよう」と思っていましたが、しかし終わってみると結構なボリュームになってしまいました。最後まで読んでいただいた皆様には感謝申し上げます。
今回の記事は初回リリース時には文字と画像のみですが、音や動画も連動できたらより理解しやすくなっていいなと考えています。ちょくちょく修正を加える予定です。
では、また、別の記事でお会いしましょう。