先日、YouTubeの動画に「ギターや三味線の楽譜をミンミンで弾けるか?」と問い合わせをいただき、「できなくはないが、初心者には難しいと思う」とコメントを返信しました。
「三味線のツボ(勘所、三味線の棹(ネック)を押さえる位置)をミンミンのフレットにコンバートすれば、三味線の楽譜はミンミンで『ほぼ』弾けますが、『ほぼ』に含まれないところは~」と返信に書きました。これはつまり「ツボとフレットのコンバートさえできれば、ほぼ弾ける!」ということになります。
今回は、津軽三味線用の楽譜(文化譜)をミンミンで弾くための方法、三味線のツボとミンミンのフレットのコンバートをメインに解説します。
ターゲットは「三味線は持っていないけど、ミンミンで三味線ぽいことをしてみたい人」「三味線も三味線用楽譜も持っていて、ミンミンでも三味線の曲を弾いてみたいがどうやっていいかわからない人」とします。
もくじ
- 津軽三味線用の楽譜(文化譜)の入手
- 三味線の「ツボ」とミンミンの「フレット」のコンバート
- ミンミンで「じょんがら節六段」をちょっと弾いてみよう
- ミンミンではそのまま再現できないところ
- あとがき
では、始めましょう。
津軽三味線用の楽譜(文化譜)の入手
津軽三味線用の楽譜で多いのは「文化譜」というギターのTAB譜のような表記の楽譜です。「津軽三味線」「楽譜」でググるとヒットします。有料販売しているものも無料でダウンロードできるものもあります。
今回は三味線のチューニングが「二上り」のものを使います。
文化譜の読み方がわからない人は、このSHAMISEN LABさんのnoteの解説がわかりやすいと思います。
三味線の「ツボ」とミンミンの「フレット」のコンバート
まず、三味線のツボ(勘所)とミンミンのフレットの関係を記した変換表です。
この表が、今回のこの記事の伝えたいところのほぼ全部です。
この表をもとに、ミンミンのネックにツボのマークを貼っていきます。
一本指コードのときに「C」とか「D」とか貼ったときのように、ツボの印を貼っていきます。
全部貼ってもいいのですが数が多く大変なので、今回は★のついた0,3,4,6,9,10,12,14,16 の、全9か所でいきましょう。(19のツボは、ミンミンのフレットがないので除外します)
例えば、表を見ると三味線の4のツボはミンミンでは5フレットに該当しますので、ミンミンの5フレットのところに4のツボの印を貼ります。このように、★のついたツボ印を該当するフレットに貼っていきます。(弾きたい曲(楽譜)がこれ以外のツボを使っている場合は、そのツボも貼りましょう。)
貼ると、こういう感じになります。
あとは、文化譜に書いてあるツボの数字を追ってミンミンを弾けば曲になります。
(印を貼らなくてもわかる人は、わざわざ貼る必要はあるいません。)
「じょんがら節六段」をちょっと弾いてみよう
サンプルとして「津軽じょんがら節 六段」の一段目の一部を弾いてみます。
「津軽じょんがら節 六段」は津軽三味線のエチュード的なものです。練習曲ではあるものの津軽三味線の基礎となるおいしいフレーズエッセンスで構成されており、これを弾きこなせれば津軽三味線ぽいところ、カッコいいところのかなりの部分を表現できます。(どんな曲なのか、三味線で弾いたときのお手本ではなわちえさんのYouTube演奏のリンクです。)
楽譜は「三味線」「六段」「楽譜」などでググるといろいろヒットします。
簡易的な文化譜を書いてみました。
ギターのタブ譜と同じように、糸(3本の線、ギターなら弦)の上に押さえるツボ(数字、ギターならフレット)が記されています。
数字の下の短い線は音の長さ(音価)を表します。何もない数字は4分音符、1本線は8分音符、2本線は16分音符です。
本来、文化譜には「ス」「ハ」「スリ」「Ⅲ」など弾き方や押さえる指の指示も書いてありますが一旦無視します。今回は押さえるツボの位置と音の長さだけを考えます。
ミンミンで弾くと、こうなります。
こんな感じで、ミンミンで弾いても「じょんがら節六段」になっていると思います。
ミンミンではそのまま再現できないところ
これでだいたいソレっぽい演奏はできますが、やはり三味線とミンミンは違う楽器なので、どうしてもミンミンでは再現が難しいところがあります。
ミンミンは19フレットまでしかないので、それより高い音は難しい
じょんがら節でよく出てくる高音の「19」のツボ(ここのフレーズの一番高い音、B♭の音)は、ミンミンでは「22」フレットに相当します。しかしミンミンは19フレットまでしかないので、そのままではこの高音を出すことは難しいです。
難しいんですが、その音が出せないわけではありません。
弦の高音部、フレットがないところを強く押さえたら、弦がフレットに接触していなくてもとりあえず音は出ます。
19フレットよりも高い位置、22フレットがあるあたりを押さえてピッキングすると、音量が小さくなり音色の感じも大分変りますが音は出ます。押さえる位置や強さを調整して、欲しい音程が出るようにやってみてください。
実際どういうことか、動画で解説しました。
じょんがら節六段で出てくるツボは、この「19」のツボの下の音は「16」のツボのGの音で、それはミンミンにもある「19」フレットなのでそのまま出すことができます。つまりは、ミンミンでもほぼ全部の音は出せるけれど、最高音19のツボのB♭だけカバーできていないということです。
これに関して、試しにボディに19ツボ用のフレットを付けたら、かなりいい感じになりました。
津軽三味線ぽさを出す特有の奏法
上記の六段を弾いたときにひとまず無視した楽譜上の「ス」「ハ」「スリ」などは、奏法の指定です。「スクイ」「ハライ」「スリ」「前バチ」「押しバチ」など、文化譜で細かい指示をしている部分はそのニュアンスを出すためであり、きっとこういうところで津軽三味線ぽさやダイナミクス、カッコよさが出ます。(わかりやすい奏法の解説動画がありました)
はなわちえさんの演奏を見ると、バチを当てる位置が前後に動いていたり、フレーズは速くなったのにバチの動きは逆に遅くなったように見えるところがあったりします。これらはどう弾くかを楽譜で指定されています。音を出すだけなら同じバチの位置でアップダウンを繰り返すピッキングで弾けばいいのでしょうが、それだと恐らく表情が変化しないつまらない演奏になるのと思われます。
この独特の奏法をミンミンでどう再現するか、今はまだ誰も「こうすればいいよ」というのを示していません。三味線弾きでミンミン持ってる人はすでに答えを持っているのかもしれませんが、三味線を一回だけ触ったことがある程度の私はわかりません。また、そもそもミンミンと三味線は別の楽器なので、そこまで完コピみたいにこだわっても意味がないのかもしれません。
どうするのがいいのか、今のところ結論は出ておらず保留です。
あとがき
今回の記事、津軽三味線をよくわかっていない私ががんばって書いてみました。
三味線をやってる人にとっては、「それは違う」等ご意見あるかもしれません。
違ったかなと思うところは、複数の方(特に三味線をやっていてミンミンも弾いている人)のご意見をいただいた上総合的に判断し記事更新していきたく思います。
また、今回と同じ考え方で「沖縄三線の楽譜(工工四)をミンミンで弾くにはどうすればいいか」も書けそうなので、そのうちやってみたいです。
【2022年10月10日 追記】
文化譜のくだりで音価のことに触れていなかったので、譜面と記事を修正しました。